一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

 同時に少しだけ羨ましくもあった。そんな風に守ってくれる人が、私にはいなかったからだ。

「兄の存在は、きっとラナーシャにとって支えだったのでしょうね……」
「む? そうだろうか?」
「ええ、そう思うわ。人間、やっぱり支えがないと生きていけないでしょうし……」

 ただ私の境遇は、ラナーシャよりも幾分かマシであった。故に彼女が、恵まれているとは思わない。
 そもそも私にだって味方はいた。三人の使用人達は、私をずっと支えてくれていた。故にこの羨望は、単純に私がマグナス様という人間を素晴らしい人だと思っているからなのだろう。

「君にも支えはあったのか?」
「え?」
「君も過酷な運命を歩んできた。そんな君を支えてきたのはあの三人の使用人なのだろうか?」
「ええ、それはもちろんです」
「……」

 投げかけられた質問に、私は素直に答えたつもりである。
 だが、何故かマグナス様は納得していない。何か疑問でもあるのだろうか。

「……気のせいだろうか。君にはもっと別の何かがあるような気がする」
「別の何か?」
「その澄んだ目の奥に、時々陰りが見えるのは俺の気のせいだろうか?」
「……さて、それはどうでしょうね?」

 マグナス様の言葉に、私は笑ってみせた。
 しかし正直、かなり動揺している。彼は私の根底にあるものを、見抜きつつあるからだ。

 あの三人が、私の支えになっていたということは間違いない。
 ただ私の中には、もう一つの支えがあった。心の中にある父に対する暗い感情がここまで私を支えてきたことは、間違いないのだ。