一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

 マグナス様は、ドルピード伯爵家から幾分かの領地を分け与えてもらうことになっている。その領地の管理が、彼の今の仕事だ。
 そんな彼を支えることが、妻である私の仕事ということになる。当然、それはきっちりこなすつもりだ。例え一年で離婚するにしても、その気持ちは変わらない。

「伯爵家を継ぐのは兄上だ。それは生まれた時から決まっていたことではある。しかし、我々には事情があったのだ。ラナーシャの存在だ」
「なるほど、お二人はラナーシャを守る必要があったと?」
「ああ、故に我々は他の家の兄弟よりも固い絆で結ばれていた。共通の敵が、できたという訳だな……」
「敵ですか……」

 マグナス様は、私に兄との関係を教えてくれた。
 なんでも彼がこの屋敷で暮らすようになったのは、その兄の考えであるそうだ。

「どのような説得をしたのかはわからないが、俺はラナーシャとともにこの屋敷で住まうことを許された。それは全て、ラナーシャを守るためなのだろう」
「彼女を奥様から切り離したかったということですよね?」
「ああ、そういうことになる。それに今はマシになっているが、以前までのラナーシャは俺と兄上以外とはほとんど話せないくらい人に怯えていた。だから俺と一緒に安全な場所に避難させられたという訳だ」