一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

「……アラティア様は、大丈夫なのですか?」
「え? ああ……」

 そこでラナーシャは、私に遠慮がちに問いかけてきた。
 どうやら彼女は心配してくれているようだ。私が父や後妻や妹から、不当な扱いを受けていないかどうかを。
 わかっていたことだが、彼女の心根が優しいということが改めて理解できた。そんな彼女は、きっと私の答えに傷ついてしまうだろう。だがそれでも、嘘をつくつもりはない。

「今の家族との関係は、正直に言ってしまうと悪いわね。でも私は、肉体的な暴力などは受けていないわ。腫れ物扱いとでもいうのかしらね。いないものみたいに扱われているわ」
「そんな……」
「……」

 私の説明で、ラナーシャは悲しそうな顔をしていた。わかっていたことではあるが、その表情には心が痛くなってくる。
 一方で、マグナス様はその表情を強張らせていた。こちらはどちらかというと、私の扱いに怒りを覚えているということだろうか。

「どこの者達も変わらないものか……」
「ええ、そういうものみたいですね……」

 マグナス様の言葉に、私は同調する。
 前妻の子と妾の子という違いはあるが、私もラナーシャも家族から迫害されている存在だ。そんな居場所のない私達は、一体どこに行けばいいのだろうか。