一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

 ラナーシャの事情については、二人が兄妹であるということから既になんとなく察することができていた。
 しかしそれでも本人の沈痛な面持ちから実際に聞きされると、心に来る。だがそれでも私が動揺する訳にはいかない。もっと動揺しているであろうラナーシャのためにも。

「母は迷った結果、私を産んだそうです。それは私という命を奪いたくないという願いからでした。しかし私の存在は、マグナス様達のお母様……本妻の怒りを買ったのです。私の母は、義母にひどく痛めつけられたそうです。肉体的にも精神的にも……」
「……ドルピード伯爵は、何も?」
「父は母を愛していた訳ではありません。ただ自分の欲望を満たしただけです。結局心労が祟って、母は亡くなりました。その後、義母の暴虐の対象は私になったのです。父は私にも興味はありませんでした……だから、私は」
「あっ……」

 ラナーシャは、自分の服をはだけさせて肌を晒した。
 そこには、おぞましい痕の数々が記されている。彼女の怯えの理由を、私は改めて理解することになった。

「私を助けてくれたのは、マグナス様ともう一人の兄であるハワード様です。ある時、私に何が行われているかを理解した二人は、私を庇ってくれたのです」
「……ラナーシャの存在は、私も兄上も知っていた。他ならぬ父と母から聞かされたいからだ。そして母は、我々に対して都合が良いように吹き込んでいた。それを疑問に思うようになったのは、恥ずべきことだが十二を過ぎた頃だった」