一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

「ラナーシャ、それならこの状況は一体どういうことかしら? 使用人として呼ばれたあなたが、私がやって来たことでベランダに隠れた。その理由は?」
「私とマグナス様の関係を悟られないためです」
「肉体関係ではないの?」
「ええ、私とマグナス様は兄妹なのです」

 ラナーシャは堂々と私に宣言してきた。
 二人が兄妹、その言葉に固まってしまう。もしかしたら二人の関係性は、私が思っていたのとは違う方向で厄介なものなのかもしれない。

「……マグナス様、今ラナーシャはあなたと自分が兄妹であると言いました。それは間違いありませんか?」
「……ああ、間違いない」

 ラナーシャの宣言を聞いた私は、すぐにマグナス様に確認した。
 彼は、それに対して力強く頷いている。二人が兄妹であるというのは、間違いなさそうだ。

「私の記憶が確かなら、ドルピード伯爵家には女子はいなかったはずです。いいえ、仮に女子がいたとしても、身分を隠してメイドとしての仕事に従事する意味がわかりませんが……」
「それは私が、存在してはならない娘だからです。私の母親は、ドルピード伯爵家に仕えているメイドでした。父……つまりドルピード伯爵は、その母を襲ったのです」
「……」
「その結果生まれたのが私です。端的に言ってしまえば、私は妾の子なのです」