私は失恋した。

 バッサリと心が斬れた。

 だけど幸せそうな菜保子の顔を隣りで見ていると自分も幸せな気分になる。

 晴れて菜保子の彼氏となった大地君は二学期には転校するし。

「大地君がいなくなったら菜保子を独り占めできるな」
「それ、洒落にならない発言だな」

 私が冗談混じりに大地君にこっそり耳打ちすると彼は見る見る顔が青ざめていった。

「大地君がいない間は男子の魔の手から菜保子を代わりに守ってあげるわよ」
「頼みます」

 私と大地くんの視線の先には眩しい菜保子の笑顔があった。

「二人とも全校集会に遅れちゃうよ〜」

 私の方を見て手を振る菜保子を、まだ私は好きだ。

 ……大好きだよ。


       了