物心ついた頃から、私は自分は不幸な子供だと気付いていた。

酒乱の父とヒステリーばかり起こす母は、毎日が修羅場で、家の中を物が飛んだり壊れたり。

しかし、そんな両親も、家から一歩出ると模範的な大人に変わる。

私は、家では日常的に虐待され、学校へ行ってもクラスメイトにも教師にも無視されるような日々。

不幸中の幸いと言えるかどうかはわからないが、私は空想好きで、自分の心の中に別の世界を持っていて、つらいことがあれば、すぐにそこへ逃げ込むことが出来た。

もう一つの世界では、私はお姫様でも何でもないが、優しい両親から大事に育てられ、可愛い子犬も大事な家族の一員。

学校に行けば、友達と愉快な日々を過ごしている。

他人にしてみれば、なんてちっぼけな理想郷だと思うかもしれない。

この、もう一つの世界は、成長と共に少しずつ変化する。