もごもごと何かいうと、彼は改めて頭を下げた。
「リリシア様。あの時は本当にありがとうございました! ずっと、お礼を言いたくて……ほんとうに。ありがとう、ございました」

 そして、隣に立つセヴィリスに向かっても深く頭を下げた。

「あの、ようこそいらっしゃいました。院長は足を痛めてしまって、お迎えに出られず、ぼ、ぼくが代わりにお迎えにあがりました。聖騎士様」

 セヴィリスは優しく頷いた。

「ああ、ありがとう。シノ。久しぶりだね。私のこと、よく覚えていてくれた」
「も、もちろんです!デインハルト伯爵様。僕の、僕たちの命の恩人ですから!」
 彼は誇らしげにその名を呼んだ。

(そうだわ、セヴィリス様はここを訪れたと仰っていた。二人はあれから会っていたのね)

 森での出来事、ラギドのおぞましさが不意にリリシアを襲う。彼女は頭を振ってそれを追い出した。今はこの惨状の理由が知りたいのだ。

「シノ……あの、あなた達のおうちが……あれは」
 リリシアは無惨な住まいの残骸に目を向けた。シノは
 暗い目で俯く。

「この修道院は、近いうちに取り壊されるのです」
「な……んですって」

 リリシアとセヴィリスは顔を見合わせた。

「シノ。院長殿にご挨拶させてもらっていいかな。案内を頼むよ」

 セヴィリスは狼狽えているリリシアに気遣うように声をかけた。
「まずは院長殿に話を聞こう。なにか、事情があるに違いないよ」