たとえ、彼が責務で自分を大切にしてくれているのだとしても。これは幸せに違いないのだ。
 のけ者だった自分がこんなに大切にしてもらえるのだから。

 このところ何度もそう思う。むしろ、必要以上にそう思うようになっている。
(まるで、自分に言い聞かせてるみたい……)
 リリシアはふとそれに気づき、小さく苦笑した。

 ばかね。私。

 夫がこちらを向いた。どうかした?気分が悪くなったかな? 瞳でそう尋ねているのがよくわかる。
 リリシアは柔らかく首を横に振った。

(そうよ。セヴィリス様がそばにいてくださることだけで、幸せ)

 途中、街道沿いの宿屋に泊まり七日ほどかけて、彼らはようやくベルリーニ領へと入った。
 やがてなだらかな丘が見えてくる。レイフィル村の外れにある見慣れた鉄の門が見えてきた。
「あれが、修道院ですわ!」

 きっとまた、子供達はいち早く馬車の音に気づき、誰がきたのかと好奇心をあらわにしているだろう。
 楽しみになってきて、リリシアは声を弾ませた。