彼の案内でリリシアは建物のなかに入る。三角屋根の、大きな食堂くらいの広さだ。

「隠れ家……というのは」
「ここは元は先々代の温室だったんだ。光が綺麗に入るから、少し改造して使わせてもらっている」

 壁面には本棚がずらりと並び、中央には台が所狭しと置かれている。画廊のような雰囲気だ。そして、台の上にはさまざまな形と色の石が飾られていた。

 赤い石、黒い石、三色混ざった石など、そのどれもがガラス屋根からの太陽光で煌めいている。

「す、すごく、綺麗です…!」

 リリシアは目を大きく見開き、あちこちを見渡した。まるで宝石の間に迷い込んだようだ。

「これは……宝石……なのですか?」

 見たこともない種類の石たちの輝きに囲まれて、セヴィリスは照れくさそうに首を横に振った。

「貴女が思うような『宝石』というのはほとんどないよ。宝石は主に宝飾品に使われるものを指すのだけれど、ここにあるものたちを分別する名前はないんだ。大部分がいわゆるただの石だ。なかには奇石と呼ばれるものもあるけれど。私は色々な土地に行くことが多いから、そこで見つけた変わった石を集めて鑑賞するのが好きなんだ」
「これが、ただの石……」

 リリシアは見回す。どれもこれも個性的な色や輝き方をしていて、見ているだけでも楽しく、心が躍る。

「そう。宝石は、皆が価値があると決めてこそ貴石、宝石と呼ばれるからね。でも、そんなものに分類されずとも美しいもの、わくわくするものはこの世にたくさんあるんだ」

 彼の口調はだんだんと熱を帯びてきていた。