しばらく見つめ合った後、二人は慌てて目を逸らし手を離した。セヴィリスは頬を赤くし、「案内したいところがあるんだ。いいかな」と言って歩き出す。

「は、はいっ」
 リリシアも耳が熱いのを意識しながら、彼の横に立った。二人は、ぎこちなく同じ歩幅で寄り添う。

「……ダリウス卿は私の叔父なんだ。兄である父とは八つほど離れている。本当は、父が聖騎士長の位を退く時、あの方が次の聖騎士長に推されていた」

 やがて、彼はポツポツと語り出した。

「だが叔父上は後進の育成に努めたいということで私を陛下に推薦した。それで、こんな若造が聖騎士長になることになったんだよ」

 セヴィリスは少し自嘲気味に微笑んだ。

(そんなお話をしてくださるの、初めてだわ)

 リリシアは目を見開き、彼の言葉に耳を傾ける。
「そ、うだったのですね……。きっと、ダリウス様は、セヴィリス様がお役目をしっかりと果たされると確信されているのですわ」
「どうなんだろうね。今の立場の方が動きやすいからだと仰っていたし、あの方は型にとらわれない奔放な方だから」
 夫は肩をすくめる。
「とても貴方様のことを大切に思っていらっしゃるようでした」
「そうかい?それならもっと認められるよう、頑張らなければいけないな。ただ、」