「なんだか、貴女と叔父上のやり取りを見ていたら、とても冷静でいられなくなってしまった。申し訳ない」
「……いえ、私こそ、考えなしでございました」

 リリシアは目を逸らし、小さな声で答える。

「リリシア殿、私を見て。お願いだ。今私はとても、嫌な言い方をしてしまったね」

 彼の真剣な様子に、リリシアはゆっくりと夫の瞳を見つめた。

「こういうところがまだまだ子供だと叔父上に笑われてしまうのだろうね。貴女に嫌な思いをさせてしまった。どうか許してほしい」

 セヴィリスは真摯に謝っている。リリシアは戸惑ってしまう。こんなに一生懸命謝られるなんて。

「ゆ、許すなんて。そんな、ほ、本当に、気になさらないで。お気遣い下さりありがとうございます……っ」
 彼女は慌てて、セヴィリスの手を握る。そして、
「私が本当に考えなしでした。ごめんなさい」
 と謝った。

セヴィリスもリリシアの手を握り返す。緑の小道で二人は知らず、手を握り合っていた。小鳥が、ピピ、チチ、とのどかに歌う。カサカサと草が揺れた。