「よお、これは聖騎士長どの。ごきげん麗しゅう。久しぶりだなぁ」

 ダリウスは呑気に挨拶をする。セヴィリスは眉根を寄せたまま、丁寧に頭を下げた。

「叔父上も、遠征でお疲れでしょう。騎士館でゆっくりお休みください」

 夫はすました口調で騎士館のある方を示した。

「おいおい! なんだよ。つれないなぁ。せっかくお前の奥方にご挨拶ができたんだからもう少しおしゃべりを楽しませてくれよ、なぁ甥っ子よ」
「叔父上。そのような呼び方はおやめくださいといつも言っているでしょう」
「二人の時だけだろう。セヴィリス。お前は私の上官だ。いつでも貴方の命令には従っているぞ」

 彼は悪戯っぽい目つきでセヴィリスを見ている。反対に、夫は明らかに不満げな表情だ。リリシアはどう振る舞っていいのかわからなくなってしまった。

(お、お二人の関係って……どういうものなのかしら)

「ともかく、もう十分妻とはお話しになったようですので失礼致します。さあ、リリシア殿、こちらへ」

 セヴィリスはリリシアを促した。彼女は慌ててドレスの裾を摘み立ち上がる。

「で、では、ダリウス卿、お会い出来てとても光栄でしたわ」
「うん、私も楽しかった。またいずれ、ゆっくりお会いしましょう」