「ダリウス様はグリンデルの聖騎士団で、副騎士長を務めておられます。百戦錬磨の戦士でございますよ」

 アンドルは尊敬を込めて彼を紹介した。

「はは、やめてくれアンドル。老体に鞭打っているだけさ。今は若手の育成が趣味なだけの中年だよ」

 彼はにこやかに手を振ってテーブルから焼き菓子を一つつまみ、口に放り込むと、そばの長椅子にどっかりと腰を下ろした。

「それで?今日はどういうわけで君たちはこんなに賑やかなのかな?見たところ客人は誰もいないようじゃないか」

「ダリウス様。これは、セヴィリス様が奥方のお望みを叶えるために催してくださったお茶会でございますよ」
「ほお? 詳しく聞きたいね。リリシア殿、どうか私の横に来て説明してくれないか?」

 彼は鷹揚に笑い、リリシアを手招きした。セヴィリスの叔父だというが、彼のあっけらかんとした態度は歳の離れた兄のようにも見える。使用人たちも笑顔で彼を囲んでいた。

「は、はいっ……」

 リリシアは彼に言われるまま、長椅子に腰を下ろす。そして、今回の趣旨を説明した。

 ダリウスはニコニコとリリシアの話を聞いては頷く。その様子は話し手を安心させ、緊張をほぐすものでリリシアも初対面ながら、この逞しい紳士に好感を持った。

(セヴィリス様のおじさまということは、お年はお父様と同じくらいなのかしら、とっても話しやすい方だわ)