「このお茶、蜂蜜の味がするわ、ね、サラ、とっても美味しい!」
「マーサさん、それは朝からリリシア奥様が準備してくださったのよ。蜂蜜をたっぷり塗った焼き菓子もあちらのテーブルに籠いっぱいあるわ」
「素敵ね!こんな広いお庭で食べられるなんて……いつもより断然美味しく感じるもの」
「お庭の飾り付け、お花がいっぱいで……それにほら、貴女のドレス、刺繍が可愛らしいわ」
「母のものなの。思い切って自分用に丈を詰めたわ」

 女性たちのはしゃぎ声が太陽の降り注ぐ緑の庭園に響く。リリシアが提案したお茶会に集まったのは普段はグリンデル領で使用人として働く男女合わせて三十人ほどだ。皆、思い思いのお洒落をしてやってきている。

 はじめは招待状を手にみんな緊張した面持ちだったが、知り合いばかりなのと、リリシアが手ずから皆をもてなしたのでだんだんと笑顔になっていった。
「お茶会に招かれるなんて、貴婦人になったみたいよ」
「私も、最近は忙しくて、自分のためにおめかしするのは久しぶりだわ」

 使用人たちは、休暇にはもちろん村や町で自由に過ごしているが、伯爵家の館での宴に出席するとなると皆初めての経験だ。料理人たちは文句を言いつつも、同僚のために上等な菓子を山のように作った。

「今度は、あなた方もご招待させてくださいね」
 奥方に頭を下げて感謝されては、厨房も張り切らざるを得ない。皆が笑顔で過ごせるお茶会が、リリシアは嬉しくてたまらなかった。

(そう、私が出席したかったのはこういうお茶会だったんだわ……)