「すぐ家令に手配させよう。どなたか招きたい人はいるかな?この館は王都から離れた辺鄙な場所にあるから、街の館で開催した方がいいだろうか。私は貴族の知人はほとんどいないんだ。だが、誰かつてを辿って招待しよう」

 リリシアは首を横に振った。

「あの、サラさんや、私の世話をしてくれる方たちをご招待したいのです」
「サラ? 侍女の?」

 リリシアは頷いた。侍女や使用人を茶会に招くなど聞いたことがない。だが、これが彼女の望みでもあった。

「皆さん、ほんとうに良くしてくださいます。私の体調を気遣ってくれるのがほんとうに嬉しくて」

(少し大胆すぎたお願いだったかもしれないわ、困ってらっしゃる)

 リリシアは肩を小さくした。出過ぎた望みだったかもしれない。

「それは……」

 セヴィリスはなにか言いかけてやめた。

「わかった……彼女たちも喜ぶと思うよ。楽しい茶会になるといいね」
「あ、ありがとうございます!」

 セヴィリスは柔らかく頷くと、席を立つ。今宵の魔印の手当ても滞りなく終わったのだ。夫は、豪華な寝台のある部屋を出ていく。

「じゃあ、ゆっくり休んでね。おやすみ」
「おやすみなさいませ」

 夫婦はそう言い合って、互いの部屋へと別れる。夜が更けていくなか、満月へと向かい始める月が淡く光っていた。