リリシアは驚いて寝台から立ち上がる。

「よ、よろしいのですか?」
「もちろんだよ。こちらも色々と手続きを急かしてしまったからね。貴女に申し訳ないことをした。気になるのは当然だよね。真っ先にあの少年たちを守ろうとしたのは貴女なのに」
「そ、そんな……。でも、ありがとうございます、旦那様……」

 ねぎらいの言葉に、彼女は思わず涙ぐみそうになりながら夫を見つめた。

「とても、嬉しいです……」

 セヴィリスは緑色の瞳をぱちくりとさせた。

「……う、うん。わ、私も貴女が望みを伝えてくれたことが嬉しいよ。……あっ、あのほら、他にもないかな、なんでもいいんだ」

 夫が目に見えて慌てだしたので、リリシアもつられてどぎまぎとしてしまう。セヴィリスの凛とした風貌が焦った表情になると、なんだかとても。
(可愛らしい……)

 リリシアの頭にそんな言葉がぽわんと浮かぶ。彼女は慌ててそれを打ち消した。

「え、ええと、で、では、もうひとつだけ」

 リリシアは頬を染めながら長年の願いを口にした。セヴィリスは期待を込めて頷く。

「できれば、お茶会を」

「茶会? ご婦人方が興じる、あの催しのこと?」
「ええ……」

 彼女は気恥ずかしそうに頷く。

「その、私はあまりお茶会の経験がないので」

 最後に侯爵夫人に招かれた時は、水をかけられてしまった。