「……なんだか実に、貴女らしいな。森でのこと。あの少年たちのことが気になるんだね」
「ええ。もしかして、あの子達まで魔印に苦しんでいたらと思うとずっと心配だったので……」

 リリシアはカップを持つ手に力を込めた。

「も、申し訳ありません。楽しい催しなどではなくて」

 セヴィリスは首を横に振った。

「そんなことはない。気になっていることを教えてくれて嬉しいよ。だが、彼らの安否については問題ない。私たちはあの後、修道院を訪ねたんだ。……実はそこで貴女の素性も教えてもらったんだよ」
「ま、あ……!そうでしたのね」

 セヴィリスは慌てて付け加える。

「も、もちろんこれは聖騎士として正式な手続きだよ。魔物に遭遇した者への聞き取りだから」
「ええ、わかっております」
 
 聖騎士は存在を公にしないと言っていた。だから、話が闇雲に広がったりしないよう注意深く配慮されているのだ。

「たまにしか訪れることはできませんでしたけれど、私はあそこで子供たちと一緒にいるのが楽しくて……でも、挨拶もできないままこちらに来ましたから」

 あの修道院はリリシアにとって唯一の心安らぐ場所だった。最後にもう一度金を寄付できなかったのが少し心残りだが。

「でも、それを聞いてとても安心しました。ありがとうございます!」

 リリシアは夫に礼を言う。セヴィリスは顎に手を当て、考えるそぶりをしていた。
「では、今度一緒に修道院を訪ねるのはどうかな」
「え?」