だが、セヴィリスは慰めるようにリリシアに告げる。

「魔印の手当てができるのは私たち聖騎士だけなんだ。それでも、一時的に和らげることしかできない。これからも、満月の晩が一番痛みがひどくなると思う」

 彼は椅子から立ち上がり、胸に手を当てた。

「必ず。あの魔物、ラギドを倒し貴女の魔印を取り除く。なんでも望みを言ってほしい。貴女がここで快適に過ごせるように、みんなでがんばるから」

 あの時リリシアは少年たちを守る為に無我夢中で魔物に立ち向かった。そのせいでアレに目をつけられたことになる。

 行動したことを後悔はなんてしていないけれど、でも。

 リリシアの中で色々な気持ちがぐるぐると回る。

「あの時の、……私の、不注意と、勇み足のせいで、このようなご迷惑を……ほんとうに申し訳ありません」
「そ、そんなことはない! あの場でラギドを倒せば魔印は消えていた。これは私の落ち度だよ。貴女が気に止むまったく必要はないんだ」

 セヴィリスは語気荒く彼女を遮る。さらに申し訳なさそうに眉を下げた。

「ラギドは深傷を負い、姿をくらませている。傷が癒えるまで数ヶ月はかかるはずだ。本当は棲家を探し出して叩きたいのだが、闇に紛れてしまった魔物を見つけ出すのはとても困難なんだ。動き出すのを待つしかないのだけれど」

「大丈夫だよ。貴女にとって望まぬ婚姻であることはわかっている。その、ふ、夫婦生活を送るつもりはないから、安心して」

 彼はリリシアの夜着ーーほどきかけた胸のリボンがはらりと垂れているーーを見ないようにして、後ろを向いた。