「あの、もしかしてお二人はデインハルト卿のこと、ご存じなのですか?」
「ええ、もちろんよ。有名ですもの」
「有名……そうなのですね。わ、私あまり他所の方のことは知らなくて……よろしければ教えていただけませんか?」
 リリシアは勢い込んで尋ねた。

「もちろんよ。セヴィリス様はデインハルト家の次男でいらっしゃるわ。二十四歳だったかしら。すっごくお綺麗な顔をされているの。目鼻立ちが整って、まるで絵画のようよ」
「そうそう、とても綺麗な瞳だったわ。初めて見たときびっくりしたもの。太陽のような金髪に、背もすらりと高くて……初めて夜会にご出席された日には、それはもう注目の的だったのよ」
 二人はうっとりとデインハルト卿の容姿を伝えてくれる。かなりの美青年のようだ。ただ、リリシアが知りたいのは容姿よりもその性格だった。これからずっと将来を共にするのだから。

「あの、お話しされた感じとか……」
 そこで二人は顔を見合わせた。
「お話しはしたことないわ。あの方はダンスも踊ったことないわ。……あのね、セヴィリス様にはあだ名があるのよ」
「あだ名ですか?」
 そうそう、と二人は大きく頷き声を合わせた。

「『妖精あたま』よ」

(よ、妖精……あたま?)