「それは当然よ。だって、私たちの中で一番早く結婚が決まったんですもの、ねえ?リリシア。嬉しいわよねえ?殿方に見初められて、私たちより価値があるってことですもの」

 廊下の中央で姉妹が目を細めてリリシアを見ていた。

「え?そ、そんなつもりでは」
「いいのいいの! 気にしないで。私たちも喜んでいるの。ほんとよ」
「そうそう、あなたが幸せになってくれると嬉しいわ」

「お二人とも……ありがとうございます!」

 リリシアは嬉しくなって思わず顔を綻ばせた。まさか、この二人にそんな言葉をかけてもらえるとは思わなかったのだ。リリシアの素直な反応に姉妹は顔を見合わせいつものようにくすくす笑い出した。

「でもね、リリシア。すこしだけ、私たち心配してるのよ。……お父様、お相手のこと何にも知らせてくれなかったんじゃない?」

 リリシアは頷いた。




「は、い。そうなんです。お名前だけは教えてくださいましたけれど」
「デインハルト伯爵家でしょ。うちよりも少し上かしら?なにしろ広大な領地をお持ちなのよ。館もたくさんあるって聞いてるわ。よかったわねえ」

 彼女たちはにやにやとしている。なんだか含みのある言い方に、リリシアは首を傾げた。