老神官は目をすがめて黒く染まった石を見た。

「元は金石ということであれば、聖堂の宝物庫にある剣と同じかもしれませぬ。刃はこぼれてしまったが、魔を屠る剣として大切に祀ってありますのじゃ。金石は祓魔士にだけ伝わる、魔を祓う石と言い伝えられております」

 セヴィリスと数人の聖騎士はルーデンの祓魔士会についてこれからもさらに調べをすすめることを決めた。もしもまだ、祓魔士として生きる者がいれば、互いに協力できるからだ。
 聖騎士団としては上々の調査結果だった。

 そして、リリシアは。

 聖堂の静かな庭園から、彼女は父が過ごした孤児院を眺めていた。

「……貴女の父上のご先祖は、祓魔士だった可能性が高いね」

 セヴィリスは妻に歩み寄る。彼女も、ゆっくりと頷いた。

「とても、驚いています。……でも、なんだかすごく、誇らしいの。父は、立派な薬師でした。その精神には人々を助ける祓魔士様の血が流れていたのですね。ただ、父がそれを知っていたかどうかはもう、わからないけれど」

「そうだね……けれども、そんなことは問題ではなと思うな。貴女のご両親は二人とも、人間として素晴らしい方だったのだと思うよ」

 二人は寄り添い歩く。リリシアの目には、涙が光っていた。