家令は恭しく首を横に振る。

「恐れながら、あれは仮の宴にございます。ダリウス様の命により、もう一度、本当の婚礼の宴を開くよう申しつかりましたので」

 まことにおめでとうございます。と、アンドルはニコニコと笑う。その向こうの席から、ダリウスがグラスを片手に掲げ、片目を瞑ってみせた。

「間違いじゃないだろう? 甥っ子よ」

 悪戯っぽい目つきで二人を見る。二人はぎゅっと握り合った手に気づき、真っ赤になった。

「……あ、ありがとうございます……叔父上」
「気にするな。お前が幸せなのは、私も、兄も、皆、幸せだ……レイスもな」

 セヴィリスは皆に向かい、グラスを掲げた。その目がすこし、潤んでいたのをリリシアだけが気づいた。

 その夜の宴は空が白み始めてもなお、華やかに続いていた。