数日間の帰り道の末、ようやく二人がデインハルト館に戻ったとき、デインハルト家の皆は驚きと喜びに満ちた顔で二人を出迎えた。

 リリシアとセヴィリスが固く手を繋ぎ、ぴたりと寄り添いながら馬車から降りてきたからだ。

 叔父であり副聖騎士長のダリウスは片眉を上げ、家令に何事か囁く。家令のアンドルは破顔して深く頭を下げた。

「仰せのままに、ダリウス様」

 そうして、その夜は華々しく宴が催されたのだ。婚礼式の夜よりもさらに倍の花が所狭しと飾られ、吟遊詩人はリュートをかき鳴らし、ありとあらゆる料理が食卓に並べられた。蝋燭の火がゆらゆら楽しげに揺れる。

だが、見事な宴の中心に座らされたセヴィリスもリリシアも二人してぽかんとしていた。

「ええと、アンドル……これは一体どうしたの。今夜はなにか祝いごとでもあったかい?」

 彼は戸惑いながら陽気な音楽を奏でる楽団と踊る人々を見ている。リリシアも訳がわからないと言った顔だ。ただ、二人の手は繋がれたまま。片時も離れたくないのだ。

「もちろん、大きな大きなお祝いでございますよ。婚礼式でございますから」
「婚礼?……だ、誰の?」

 アンドルは深々と礼をする

「我がデインハルト家の主人、セヴィリス様と奥方、リリシア様の、ご婚礼にございます」

 二人は目をぱちくりとさせ顔を見合わせた。

「そ、それは……もう、祝ってもらったはずだが……」