セヴィリスは、故郷グリンデルの様々なお伽話や、聖騎士の修練の話など、いろいろなことを妻に語った。彼の声は心地よく、聞いているだけで気持ちが穏やかになる。
 リリシアは目を大きく開いて時に驚き、時にくすくすと笑いながら楽しんだ。ふいに彼が呟く。

「貴女は、弟とすこし似ているね。……彼も私の話をすごく楽しんでくれたんだ。あまり人とつきあいのない私は、レイスが喜んで聞いてくれるのが嬉しかった」

「セヴィリス様……」

「彼は、父の後妻……義母上の息子だった。年が離れていたからか、本当に皆に可愛がられていて、私も彼をとても大切に思っていたよ」

 亡くなった弟を偲ぶように、セヴィリスはそっと瞳を閉じる。胸がキリキリと痛んだ。リリシアは彼の手をぎゅっと握りしめる。

「お辛かったですね……私、私もレイス様にお会いしてみたかったです」
「ありがとう……あの子も、きっと貴女を好きになると思うよ」

 夫はリリシアの額に口づけた。

「さあ、今度は貴女が話して」
「わ、私……?私は、話なんて……」