リリシアは一瞬きょとんとした。

(わたしを、喜ばせるって、どういうこと?侍女はそんなこと言ってなかった。大切なことだから痛がったりしてはダメだと……大人しくして旦那様を喜ばせるのだと)

 初夜は夫婦の証となる大切な行為なのだから、恥ずかしくても、痛くても我慢するのだ。そうすれば大切にしてもらえる、と婚礼前にそう教わった。

だが、なんだか彼の言うこととは違う気がする。リリシアはどきどきとする心臓の音のもっと奥で、感じたことのない感覚が生まれ始めていることに戸惑いながら、セヴィリスの指を見つめた。

「叔父上はなんだかいろいろ言っていたのだけれど、ちゃんと聞かなかったことを今すごく後悔しているよ。……でも大丈夫、貴女を大切に思う気持ちは誰にも負けない」

 リボンを解き、コルセットを外す彼の指がかすかに震えている。そして、コルセットがころりと落ちる。リリシアの白い胸が露わになった。セヴィリスが息を呑む。のどがこくりと上下したのが見えた。


「すごく、綺麗だ。白くて、すべすべしている……石なんかより、ずっとずっと、美しい……」

 それは、彼にしてみれば最上級の褒め言葉だったのだろうが、リリシアは思わず微笑んでしまった。

「ご、ごめ、ん……申し訳ない。比べるべきではないよね……」

「いえ、とても、嬉しいです……」