彼は院長に向き直った。

「もちろん、我らにも利があるからだよ。できればシノを聖騎士団で指導したいんだ。それに、他にも希望者は聖騎士団で預かりたい」
「聖騎士団へ?でございますか。そんなことができるのは、由緒ある御家柄のお子様だけなのでは」
「いや、聖騎士団は爵位や身分に関わらず人員を必要としている。シノのように魔獣に遭遇した経験のある男子はすごく伸びるんだ。もちろん、訓練は厳しいし命をかける役目だから、本人の意思確認はするつもりだが」

 聖騎士団に所属できれば、これからの暮らしに不自由はなくなる。

「それに、他の子供たちもきちんと自立できるようにしたい。もちろん、あなたの指導のもとで。私を助けてくれたら嬉しい」

 セヴィリスは礼儀正しく手を差し出した。

「すぐにでも使いのものをグリンデルから派遣する。なにか要望があれば言ってくれ」

 院長は肩を震わせ、聖騎士長の手を取る。
「まことに、ありがたいことです。あなたに神のご加護のあらんことを」
 外では、雲が急激に厚くなり始めていた。雨が近い。
 彼は穏やかに頷くと、リリシアの方を見た。
「では、失礼しようか」
「……はい」

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