「おお、おお…、なんと。慈悲深いことか」

 院長は胸の前で両手を組んだ。修道院へついたセヴィリスが彼らを受け入れることを話したのだ。

「あなた達にとっては、突然のことの連続になってしまって申し訳ない。この土地を買い取るつもりでいたのだけれど、ここはグリンデル領から遠いからね。万が一嫌がらせなどが起きた場合、すぐに対処するのが難しい」

 セヴィリスはすまなそうな表情になった。養父に対して感情的になったことを恥じているようだった。

「慣れ親しんだ土地を離れるのはとても名残惜しいだろう。ここはあなた方の生産拠点でもあるから」

 院長はだが、大きく首を横に振る。

「子供たちは寮の取り壊しがあった時からひどく傷ついております。夜寝るのが怖い子も大勢いますし、それは修道院の者も同じです。先の見えない不安に押しつぶされそうになっていました。この土地のことは大切ですし、感謝しておりますがこうなっては、前を向くしかありません。あなた様のお話は彼らの心を救うでしょう……本当に、ありがとうございます」

「それならよかった。……だがもし、他に案があるのなら遠慮なく教えて頂きたい。善処する」

 彼は窓から心配そうに覗いている子どもたちに目を向けて優しく微笑んだ。その姿にリリシアも思わず笑みが溢れ、院長と同じように頭を下げる。

「本当にありがとうございます。旦那様……でもやはり、院長も不思議に思っていらっしゃるかと……なぜここまでなさるのかと」