「あ、の?な、な、なにを……セヴィリス様……?」

 彼が自分を抱きしめている。魔印のある肩を強くつよく。

「申し訳ない……、貴女がとても愛しくて……」
「セヴィリス様……」

 彼は苦しそうに顔を歪めて、手にいっそう力を込めた。

「貴女は、あんな人たちに一人で立ち向かおうとしていたんだね。そして、今までもずっとずっと、この館で一人過ごしてきた。そう思うと、なんだか胸が痛くて……」
「わ、私は……」

 両親と死に別れ、この館へ来てから今までのことが鮮明に彼女のなかに流れる。嫌な思いも、悲しい思いもたくさんしてきた。それが、セヴィリスの元に嫁いだことによって少しずつ浄化されている。

「今は、とても幸せですから」

 彼女は微笑む。セヴィリスは「うん」と頷いたあと、しばらく無言で彼女を抱きしめ続けた。
 そして、思い切ったように息を吸うと、再び口を開いた。