「もっ……申し訳……ありません。とても、とてもありがたいことですのに、なんだか、その、夢のようで」
「貴女が守りたいという形とは違ってしまって、ごめんね」

 リリシアは首をぶんぶん横に振った。

「そんなこと……でもやはり、私の希望だからといってそこまでして頂くのは、いえっ、あの人たちが喜んでくれるならこんなに嬉しいことはないのですけれど、でも……」

 申し訳ない気持ちがどこかにある。リリシアはどう伝えていいかわからなくて困り果てた表情になった。

「私も、すごく腹が立ってしまったから。数ヶ月前、ラギドと遭遇したあと聖騎士団として修道院へ向かった。その時、あの修道院の皆は訪れた我らをとても歓迎してくれたんだよ」

 聖騎士団は公に知られてはいない。そのため、魔獣の調査などという名目だと胡散臭く見られることもあるという。

「シノともう一人の少年の証言があったからだろうけど、院長はじめ皆は終始協力的だった。宿も提供してくれて……あそこは善意の塊のような場所だ。貴女にとって大切なのも良くわかるよ」

 私が望んだことだ。貴女が重く受け止める必要はないよ。

 セヴィリスはリリシアを安心させるように見た。

「でも、ごめん。勝手なことをしたね」

(この方は……ほんとうに)

 騎士道精神に溢れた夫の振る舞いに、リリシアは再び胸をぎゅっと掴まれる。そして、その時になってやっとまだ互いに手を握り合ったままだったことに気づいた。

「あ」
「あ……」