そいつは真っ白だった。

 馬鹿みたいに真っ白だった。

 まるでぼたんゆきみたいだった。

 回想。
 まことは、高校生ぐらいの不良7人に取り囲まれていた。
 「おい、小坊」
 「なめてんじゃねえぞ」
 「小学生相手に大の大人が何人がかりだ」
 「て、てめえ」
 不良がまことにつっかかた。まこは不良を倒していった。
 「な、なんなんだよこのガキ」
 「こいつはただのガキじゃねえぞ」
 「ようし」
 がたいのいいヤンキーが出てきた。
 「なめやがって」
 といってヤンキーは足を開き、片腕を下にやった。
 「な」
 と、まこと。なんだ。
 「うをー」
 と、ヤンキーはうなった。
 「な」
 と、まこと。まことはヤンキーに父親のようなものを感じた。
 「おい」
 と、上のほうから大声がした。
 「え」
 大木の上に誰かいる。まことは見上げた。そこには白髪の作務衣を着た少年がいた。目は青くとがっていて大きくかわいかった。
 「たった独りに大の大人が何してんのかねえ」
 と、白髪の少年。
 「ちっ、またガキかよ」
 と、不良。
 その少年は木から飛び降りた。
 白髪の少年はヤンキーへ歩いて行った。
 「それは子供相手にやめた方がいいよ」
 と、白髪の少年。
 「うるせえ。こいつはただのガキじゃねえんだ。お前はすっこんでろよ」
 「へえ」
 と、白髪の少年。
 「おっさん」
 と、白髪の少年。
 「おっさんだとお。まだ高校生だぞ」
 「えええええええ、松陰より老けてるのにいいいいい」
 と、白髪の少年。
 「とにかくおめえはすっこんでろ」
 「ふふ」
 と、白髪の少年はほくそ笑んだ。
 「なんだ、小僧」
 白髪の少年は歩いて行った。
 「おい、来るな」
 と、白髪の少年が一瞬消えた気がした。
 「え」
 と、ヤンキー。
 白髪の少年は突然ヤンキーの前に現れた。
 「え」
 と、ヤンキー。白髪の少年はヤンキーにタッチした。と、ヤンキーが
 「うをー」
 と、悲鳴をあげ、倒れた。
 「え、今の何?」
 と、まこと。
 ほかの7人は震え上がった。ヤンキーがおきてきた。
 「て、てめえは」
 白髪の少年は両手を後頭部にやっていた。
 「俺は坂田トオルってんだ」
 と、白髪の少年はいった。
 「くそっ覚えてれ」
 と、ヤンキー。
 トオルは目をつむった。
 「あいにく、記憶力ないんでね」
 と、トオル。
 「はあ、面白くねえし、かっこよくねえ」
 と、ヤンキー。
 「だ、大丈夫か」
 不良たちは退散していった。
 「な、なんなんだ、あのガキ」
 「化け物が」
 不良はいった。
 「はあ」
 と、トオル。まことは呆然をしていた。
 「お前、女だろう」
 と、トオル。
 「えええええええええ」
 「へへ」
 と、トオル。
 「な、なんで」
 「なんでって、顔つきとか身のこなしとかあ、あと、体つきとか」
 「え」
 まことは赤くなった。
 「へえ、やっぱ女の子だ」
 「・・・・・・・・」
 「お前、なんてんだ」
 「え」
 「名前だよ」
 「ああ、天音まこと」
 「まことって呼んでいいか」
 「ええええええ」
 「だめか」
 「べ、別にいいよ」
 「じゃあ、まこと」
 「あ、ああ」
 「俺もトオルでいいよ」
 「と、トオル」
 「う、うん」
 それからまことはトオルと友達になった。