天音まことは中学生、学ランを着ていた。しかし、実は男として育てられた女の子だった。でも本人は自分は女と思っている。まことは青い長髪、前髪は真ん中でわけている。目は切れ長でイケメンだ。
 町では一匹オオカミのヤンキーで通っていた。知らない人が見ると、男にしかみえなかった。
 まことの家は貧乏だった。父親しかいなかった。母親は家をでていったと父親からきいた。この父親ならありうる、とまことは思っていた。まず、自分を男として育てたこと。父親は食堂と海の家をやっているが、売り上げはほとんどない。自称格闘家であり、幼いころより、まことを鍛えてきた。「無為自然流」とか言っているが、まことは父親が中二病みたいので、でっちあげだと思っている。
 しかし、父親は護身術や武器対抗術に優れていた。きっと警察か自衛隊に昔いたんだ、とまことは思っている。
 父親とはいつも喧嘩していた。
 父親が憎まれ口をたたいたり、まことを男扱いしたりする、するとまことがぶちぎれ、殴りかかる。
 「おやじいいいいいい」
 と、まことはいって父親につっかかる。
 父親はまことのつきを軽くかわす。
 「ちょこまかよけやがてええええええ」
 と、まこと。
 「お前のつきなど、くらっても蚊に刺された程度も感じんがな。よけさせてもらう」
 「なにいいいいいいいい」
 そうして父親は人差し指1本でまことのおでこをつく。すると、まことは後ろへふっとばされる。父親の超常的な力に関しては幼いころから見ているので、なんとも思わなかった。それに小さいころは小さい子を大人が人差し指1本でふっとばしているんだ、と思った。
 しかし、小学校高学年にもなって、がたいも大きくなってくると、さすがに不可思議に感じ出した。