「瀬尾くん! 瀬尾くんせおくん!」
「どうした。嬉しそうな顔しちゃって」
「あのね! あの、賞が!」


 興奮で全然言葉にならなくても、瀬尾くんはずっと待ってくれる。


「落ち着いて史倉。ちゃんときいてるから」
「史倉雪莉、このたび【ちっちゃな苺で賞】をいただきました!」


 へへへと笑うと、目をぱちぱちと瞬かせた瀬尾くんは、「それはつまり?」と首を傾げる。


 編集部から電話があったのは、昨日の午後。
 電話をとったお母さんが「ゆきりゆきり!」と世にもめずらしい呼び捨てをしてきたので、ただごとではないと焦って電話に出てみると。


『史倉雪莉さんですか? わたくし青いつばさとみらいの苺編集部のマノベと申します。今回、【ちっちゃな苺で賞】の受賞が決まったのでご連絡いたしました』
『ちっちゃな、いちご……』
『大賞には至らなかったものの、付き合ってからの展開が深く書かれているのが斬新だと、編集部の加点ポイントにつながりまして。特別に史倉さんのための賞を新設することになりました』



 というわけで、なんとなんと編集部からのお墨付きをもらってしまったワケなのです。