喧騒なんてまったく聞こえない。
 二人だけの世界。


 こんな学校の王子様の世界には、わたしなんて存在しないと思っていた。



『俺は、過去のそいつらとは違う』


『史倉の小説、好きだよ』


『史倉もおいで! さぁ、はやく!』


『俺は頑張ってる史倉が好きだよ』


『────好きな子が、困ってるとき』


『足がさ……いうこと、きかないんだよ』


『この試合……ちゃんとケガから復帰して、出場して勝てたら……史倉に言おうと思ってたことがある』


『俺、史倉のことが好きだ』



 だけど、瀬尾くんは。


 わたしのことを最初から、ずっと見てくれていた。


 息を吸って、ゆっくり吐いて。

 お互いの気持ちを確認して。



「俺と付き合ってください」


 精いっぱいの好きと青空。
 そんな最高のものに包まれながら、わたしも精いっぱいのうなずきを返した────。