キミと掴む、第一歩。

 ボールがひっついているみたい。鮮やかにプレーをする瀬尾くんは、キラキラと無邪気な笑顔を浮かべていた。

 楽しくて仕方がないって顔だ。やっぱり、彼がサッカーを手放す選択肢なんてはじめからなかったんだ。

 それくらいサッカー好きな彼が涙するほど、ケガは深刻だった。だけど、そんな絶望的な状況から彼は再び這い上がってきた。そしてこれからも、地獄に飛び込んでいくつもりなんだ。
 トレーニング風景を思い出して、わたしは泣きそうになってしまった。けれどそんな暇はないと言ったように、瀬尾くんのプレーはどんどん激しく、そしてカッコ良くなっていく。


「瀬尾!」


 金山くんの声とともに飛んできたボールをトラップした瀬尾くんは、ゴール目がけてシュートを放つ。けれど、横から飛び込んできたディフェンダーに阻まれて、ボールはコロコロと袴田くんのもとへ。それと同時に、会場の空気が揺れた。


 ピッチ上にて、足を押さえてうずくまる男の子がひとり。


(だめ……! 無理したんだ…!)


 サアッと血の気が引いていくけれど、ホイッスルはならない。


「瀬尾くん!」


 叫んでみても、周りの声援にかき消されてしまう。
 どうしよう、どうする?

 彼の頑張りも、努力も、選手生命も。こんなところで途絶えてはだめだ。


「春馬くん……!!」


 夢中で叫ぶ。
 その瞬間バッ!と立ち上がった彼は「袴田!」と叫んで再び走り出す。袴田くんからのパスが飛んだ先、待ち構えていた瀬尾くんはダイレクトシュートを放った。
 相手に一瞬の隙も与えないそれは、ものすごい速さで飛んでいって今度こそゴールネットを揺らした。

 次の瞬間、試合終了のホイッスル。