キミと掴む、第一歩。

「足がさ……いうこと、きかないんだよ」


 それでもまだなお笑い続ける瀬尾くんの声には、涙が混じっていた。肩が小刻みに震えている。

 今、わたしの目の前にいるのは、完璧な王子様なんかじゃない。才能だけで乗り越えてきた天才なんかじゃない。

 ただの、サッカーが大好きな男の子。
 誰よりも努力して、努力して、けれどそれを決して見せない強い人。
 だけど今は……。


「すごく……弱いね」


 ピク、と動いた眉。何かを言いかけた瀬尾くんに近寄って、震えている手をそっと取る。


「瀬尾くん。……せお、くん」


 今度は、わたしがキミを助ける番だよ。


「悪い、史倉。こんな、かっこわるいとこ、俺……」
「かっこいいよ。瀬尾くんは───…いつもかっこいい」


 かがんで、視線を合わせる。かつて瀬尾くんが、わたしにしてくれたように。


「自分の気持ちを教えて。わたし、どんな瀬尾くんも……す、てきだと思うから」
「……」
「なにが、あったの」


 緊迫する空気。しばらく黙っていた瀬尾くんは、やがて重い唇をゆっくり動かした。


「ケガで……プロは絶望的だって、言われた」
「えっ」
「サッカー自体は続けられるけど、プロになるのはもう無理かもしれない、って」