「ち、違うよ。たまちゃんがいきなりそんなこと言うから、意外すぎて吹き出しただけ」
「ホントかなぁ」
「本当だよっ」


 ぶんぶん首を振って否定しつつも、わたしの頭にぼんやりと浮かんでくるのは紛れもない、瀬尾くんだ。


(どうして瀬尾くんがこんなときに……!)


 キリッとした目だったり、細い鼻筋だったり。桃色の唇や凛々しい眉毛。
 顔の細部まで浮かんでこなくていいのにと思うけれど、解像度を増して現れてくる。


「ゆきり」
「へっ……?」


 ちょんちょんと指で顔をさすたまちゃんは、にやりと笑ったあと「顔、真っ赤」と歯をのぞかせた。


「ちょっ……ちがうから…っ」
「はいはい。そういうことにしておきまーす」
「ねえ、たまちゃん!?」


 絶対カンチガイしてる……と半ば諦めながら、もう一度お茶を飲む。精神統一のためだ。

 たまちゃんは全てのことにおいて、ものすごく勘がいい。だから、全部お見通しのような気がして、妙にそわそわしてきた。


「相手は……瀬尾?」


 途端にわたしが、ブッ!と二度目の吹き出しをすることになったのは、言うまでもない。