たくさんいるサッカー部員のなかでも、やっぱりどこか違う。まわりとは違う何かを持っている。

 鮮やかに敵をかわした彼は、そのままゴールに向かってボールを蹴った。そのボールは、ものすごいスピードと絶妙なカーブを描いて、ゴールに突き刺さる。まるで糸か何かで引っ張られているみたいに、迷いのないゴールだった。


「すごい……」


 人気が出るのも、わかる。だって、どう見てもかっこいい。

 瀬尾春馬(せおはるま)。運動神経がいいのはもちろん、頭もいい。明るくて、リーダーシップがあって、男女ともに慕われている。そしてなんと言っても顔がいい。

 これは主観的ではなく、誰もが認める客観的な事実。


 もし学校の王子様がいるとしたら、それはきっと彼みたいな人のことを言うんだろう。

 わたしみたいな地味女からしたら、遠い遠い雲の上の存在。きっとわたしが生きていることすら、彼は気づいていないだろう。


 なんというか、住む世界が違う。
 ああいう人は物語の中で圧倒的ヒーローポジションで、可愛らしいヒロインを彼女にするってことを、わたしは知っている。



 そしてわたしみたいな地味なモブキャラは、名前すら与えられず、主人公たちの世界に存在しないことだって────知っている。