現にわたしは今、彼になら小説を見せてもいいかな、と思い始めている。
 鍵をかけてかたく閉ざしていた心の扉を、彼はこの数分の間でいとも簡単に開けてしまったのだ。

 それも、扉をこじ開けるのではなく、鍵をかけた本人自らが、自ずと出てくるように。


「すごい人だ……」


 本当に二次元から出てきた人みたい。決して他人に弱さを見せない。
 それで、誰からも慕われる。




 けれどわたしは気づくべきだったのだ。
 わたしが今まで書いてきた恋愛小説のヒーローたちは。大好きな少女漫画に登場するヒーローたちは。



 周りの人には決して分からない、大きな大きな"弱さ"を、人知れず抱えているんだって。