「立花さんが僕の第二秘書としてついている頃から、亮介のお嫁さんには君みたいな子がいいなと思っていたんだ」
「……それで彼女を俺の専属秘書にと推したのか」
「もちろん秘書としての能力や将来性を買って推薦したけれど、その下心がなかったといえば嘘になるかな」

思わぬ告白に驚いたが、茂樹の思い描いた通りにことが運んだようだ。満足そうな茂樹はその場で妻に電話を掛け、こちらも「娘ができて嬉しいわ。うちの息子をよろしくお願いします」と快諾された。

その後、凛の母に挨拶をしたいと言う亮介に促されるまま、実家に招いて結婚の報告をした。突然のことに家族はみんな驚いていたが、弟の大志はなぜか終始ドヤ顔をしていた。

自分の娘が勤める大企業の副社長が相手とあって母は心配だったようだが、亮介が自分の両親もこの結婚を喜んでいるのだと丁寧に説明したことで安堵のため息を漏らす。

「手前味噌ですが、しっかり者で優しい自慢の娘です。どうぞ大事にしてやってください」
「もちろんです。必ず凛さんを幸せにします」

嬉しそうに涙を滲ませる母から結婚の承諾を得て、凛が想像していた以上にあっさりと婚約が整った。

拍子抜けしたのと同時に、本当に亮介と結婚するのだという実感が少しずつ湧いてきて、身が引き締まる思いがする。