甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。





だめ、止まらない。

エベレスト以上の悲しみの大きさに胸がうちひしがれて立ち直れそうにないよ犬丸。


ポロポロと涙をこぼす犬丸こと私に、ビリリと殺気を放つ一条くんとそれを宥める沙蘭くん。



「泣くなって犬丸。どーした、もうこいつらは立てないから安心しろ。な?」



ふわっと抱き寄せられる。

それはまるで子犬を抱えるような仕草で、トントンと優しく背中を叩いてくれる動きも同じ。



「いぬまるのっ、犬丸の…っ」


「犬丸の?」


「鑑賞用クリアファイルのビニールが破けとるぅぅぅ……っ」


「……………」



なんとこいつが。


巷で噂の一目置かれる暴走族が唯一手元に置き、その総長さんが何よりも溺愛する1匹(?)のビビりわんこオタクだと。


信じられますか。

私は信じること自体にとてつもない恐怖を感じます───。