甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。





この昔話は誰にも話さないつもりだったが、沙蘭にならいいかと思った俺は打ち明けた。



「それで、自分が総長になればそばに置いておくことができるから今ってわけだ」



こくっと俺はうなずく。

できることなら高1のときから話しかけたかったが、いろんな面を考えて安全を図ってた。



「にしても、わんこちゃんはその頃からわんこちゃんなんだねえ」


「見た目も中身もそんな変わってなくて安心したよ」


「あははっ、それ褒めてるの?でも…千明が選んだ理由がよーく分かった。やっと僕も納得できたかも」



どんなにヴァローレ額が低かったとしても、特別なにかを持っているわけではなくとも。

家柄もごく普通。
けれどオタク度は150%。


それでも俺が選ぶ女の子は犬丸以外はありえない。


たとえ犬丸が当時の出来事を忘れていたとしても、俺だけが知ってさえいればいいんだ。



「んじゃ、行ってくるわ」


「…どっちのところに?」


「犬丸を捕獲しにに決まってんだろ」



やっと会えた今、犬丸以外は眼中にない。

そんなこと考えてる暇があるなら俺は犬丸を愛でる。


たぶんそれがマミに対してもいちばん効くことだろ。