「マミを連れ戻せ」
「落ち着いてって千明。さすがに令嬢なあの子に手ぇ出したら暁も危ないでしょ」
「いーから連れ戻せっつってんだよ。…沙蘭、俺の命令が聞けねーの」
「っ、」
どうする?と、顔を見合わせる沙蘭くんとトビちゃん。
しかし犬丸の涙は止まることを知らない。
だって………、
「おくば……っ」
「「「…おくば??」」」
「いぬまるのっ、犬丸の大切な奥歯がいたいぃぃ……っ」
凍りつきそうだった空気、溶ける。
なんかね、違和感があったの。
さっきからずっとずっと変だなって。
犬丸の奥歯が……敵陣に攻撃されているぅぅぅ!!!
「クチ開けて、いぬまる」
おくちパカッと。
私の顔を両手で固定しながら、一条くんは真剣に調べてくれる。
「どう千明、やっぱり虫歯?」
「あー…、親知らずできてるわ」
「うわー、それは痛いね。僕も去年だっけな、歯医者さんをぶん殴ってやろうかと思ったもん」
そんな一条くんは犬丸だけが持ったとあるものを発見して、興味津々。



