甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。





「ね、猫葉くん…っ!」


「なんか騒いでると思ったらやっぱりこーいうこと。…今のうちに逃げて」


「で、でも…っ!そしたら猫葉くんが大怪我を……!」


「はあ…、犬丸に心配されるほど落ちぶれてないから。それに、これが俺たちの役目」



い、犬丸ですと………!

こんなときに喜ぶのもどうかと思うけれど、初めて名前で呼ばれてちょっと舞いたい。



「犬丸は逃げたつもりだろーけど、もう遅い」


「……へっ…」


「ぜったい振り向かないで走って。そしたら人がいるほうに行って、うまく紛れて」



それから猫葉くんと入れ替わるように走った犬丸は、並外れた音たちを耳にすることに。


バキッ、ボキッ、

ドガ───ッッ!!


もちろん猫葉くんの悲鳴などひとつも聞こえず、男たちの叫び声ばかり。