甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。





どうにか逃れようと試行錯誤する犬丸と、びくともしない一条くん。

まるでそれは動物病院でキャンキャン吠える飼い犬を平然と押さえているご主人さまにも見える。



「───…こうなるなら無理やりにでも奪っときゃよかった」



あ………、こわい…。

怖くないけど、怖い。


ぎゅっと固く目を閉じて、せーのっ。



「いっ、一条くんにはフィアンセがいるというのに……っ!!」



ピタリと、動きが止まる。

犬丸の制服のボタンを外しかけていた手も、覗いた首筋に埋めようとしていた顔も。



「…フィアンセ?だれ?」


「だれってっ、犬丸は知ってる…!!アクセサリー選んでふたりでムフフってしてたの……!」



あれ、ひどかった。

犬丸すぐ近くにいるのに、一条くんなんにも気づかなかったんだよ。


そのとき犬丸が誰と一緒にいたかすらも知らないんだ一条くんは。