けれど、ここでうやむやにしたらダメだ。

 赤面しそうになる頬をぐっと堪え、神永さんの吐息をすぐそこに感じながら、睨みかけるように見つめ直す。
 

「ありえないですかね」
 距離を縮めたまま神永さんは私の顎を捉える。
 他人から触れられない場所に、少しだけ熱っぽい節くれだった指の存在を認めた。


「えっ」
 そう自覚しただけで、一気に私の体温がぐっと上がる。
 
 ドキドキが止まらない。
 
 頬がとうとう赤くなっている自覚を認めてしまった。

 このままだと、心臓がおかしくなりそうな予感も。
 

「では、これで理解してもらえるでしょうか。僕の本気を――」
 そう言って神永さんの顔が私へ覆い被さる。

 それこそフェイストゥフェイスだ。

 唇と唇が触れ合う距離まで神永さんの顔が、接近して――。

「!!」

 こ、これは……どういう展開?

 限界突破しかけていた私の唇に、そうして柔らかいものが押し充てられる。


 紅月家の面々が見ている前で。