君に僕の好きな花を

「わぁ……!」

赤、白、黄色、ピンク、紫……。たくさんの色が目に映る。バラなどのブーケ用の花から多肉植物まで、たくさんの花たちが私を出迎えていた。

「すごい……」

私がキョロキョロと辺りを見ていると、江戸川くんは「ちょっと待ってて」と言いながらお店の奥へと行ってしまう。二分ほどして戻って来た彼の手には、マグカップに入れられたコーヒーがあった。マグカップの柄もお花で、思わず笑ってしまう。

「お花ばっかり!」

「……お花、好きだから」

どこか恥ずかしそうに手を動かしながら、でも嬉しそうに江戸川くんは話す。そんな彼を見ていると、自分が情けなくなっていく。夢を追いかけて横浜まで行ったのに……。

「江戸川くんはすごいね。私とは真反対だ」

「真反対?どうして?」

江戸川くんが首を傾げる。私は彼から目を逸らし、シクラメンの花を見ながら横浜でのことを話していた。

ドラマで横浜の街が映されるたびに、憧れで胸がいっぱいになっていた。おしゃれなお店やカフェが立ち並んで、ビルの群れに囲まれて、ドラマの主人公はキラキラ輝いていて……。だから私は横浜に進学した。ドラマの主人公に憧れて。