君に僕の好きな花を

私が言葉を発さないでいると、地雷だと察してくれたのか江戸川くんが「そ、そうそう!」とどこかわざとらしく明るい声で言う。

「僕、大学を卒業してからお花屋さんをやってるんだ!」

「えっ?お花屋さん?」

思わず聞き返してしまう。江戸川くん、お花好きなんだ……。あんまりイメージできないけど、でも江戸川くんはスーツを着てパソコンと向かい合っているより、エプロンをつけてお花に囲まれている方が似合っている気がする。

「よかったら、遊びに来ない?今日はお店の定休日だからゆっくりできるよ」

何故か、その言葉に私は頷いていた。



実家があるバス停を二つ通り過ぎてから、私は江戸川くんと共にバスを降りた。バスを降りると風が私のミルクティーブラウンに染められた髪を撫でていく。自然豊かなせいか、どこか風は澄んでいて心地いい。

(横浜に行くまでは、風なんてどこでも同じだって思ってたんだけどな)

そんなことを思いながら、江戸川くんとポツポツと話しながら歩く。話題の中心になるのは高校時代一緒にいた人の近況だった。