普通に笑えない…
片桐主任の言ってた“荒れてた”は葉月さんに暴力いや可愛がられてたって事?

「彼女が居てくれた学生時代の俺は寂しいと思った事は無かったですね」

やる事は激しい人だけど本当は優しい人なのかも知れない。

「バツゲームするから〜!テキーラ寄越せ」

マスターの頭を殴る。
それをマスターはまた「可愛いだろ?」と笑う。

「確かに可愛い女性ですね」
「ヤキモチですか?」
「絶対に違います」

葉月さんの酔った目が私にヒットした。

「ちあきぃの大切な…う〜ん、さくら」
「桜子だよ」

彼女はテキーラをグイッと私の前に差し出した。

「さくらぁ〜!何とかの〜盃(さかずき)」

満面の笑みを浮かべるから…
兄弟ならぬ友人の盃を…

「白石さん?」
「桜子…止めとけ」

止める二人を無視して

「頂きます!」

グラスを受け取り添えられたレモンを一噛みして一気に飲み干した。


✼✼✼


『楽しかったみたいで良かったわ』

お休み中の藍沢チーフからの久しぶりに連絡に最近の報告をするといつも通り『ふふっ』と笑ってくれる。

「その後が大変でしたけどね」

記憶が飛んだ私は副社長の自宅で目覚め二日酔いで動けず…
そんな私を甲斐甲斐しく彼はお世話をしてくれた。

『愛でられた?千晶って異常だもん』

「チーフも知ってたんですか?」

副社長の恋愛フローチャート
告白される
付き合う
一晩過ごす
好きになる
重すぎるほど好きになる

そのフローチャートの最後に愛でられるが追加されてとにかく世話を焼かれ大変だった。

『千晶と奏と私は同期だから』

と言う事は橘チーフも知ってたって事。

『愛し方の基準もお金持ちの基準も私達の次元を超えてるのは事実ね。そして背負う物も』

藍沢チーフはまた『ふふっ』と笑って

『千晶は良い男よ。友人思いだし…そんな彼が素で白石チーフと接してるのを見て応援してたの』

あの身体に色んな物を背負ってる。
蘇芳400年の歴史に身震いする。
私達には到底考えられない程の重圧かも知れない。

『それに千晶ったらチーフを5年前から好きだったのに遠回しな事しかしないんだもん』

『笑えるよね』と言葉とは裏腹な真面目な声。

「5年て私が前の彼氏と別れた時からですか?」

藍沢チーフは『あのね』と副社長のその後の話を教えてくれた。

そして、

『白石チーフにお願いがあるの。聞いて貰えるかしら?』

「お願いですか?チーフの頼みなら」

彼女は嬉しそうに笑って私に初めてのお願いをした。