「分かりました。じゃあ…先生の白石さんが選んで下さい。僕だとまた間違えるといけないので」

「わたし…私がですか?」

私に伴侶を託すって…

お粥を嬉しそうに食べたり寂しい表情を見たら優しい伴侶を見つけて助けて上げて欲しいとは思う。

せっかく冷静に話そうと丁寧に話しては見たけど本音は…複雑。

「日本旅館の近藤 椿(こんどうつばき)さんが一番良いんじゃないですか」

ズキズキする胸の内を隠してチェックしていた内容を彼にゆっくりと話す。

家柄も蘇芳の未来にもこの人が一番理想的。
日本有数の旅館の中でも長年トップを維持する旅館花椿(はなつばき)

三姉妹の次女で26歳。
趣味は日本舞踊に乗馬。
写真の彼女は儚げで副社長の恋した人はこんな女性だったんじゃないかと想像出来た。

「分かりました」

私の話を聞いた副社長は笑顔で何処かへ電話をかけ始めた。

「お世話になってます。…はいその件ですがお受けしようかと思いまして…詳しい事は後ほど」

軽く電話の相手と話して副社長は私の気持ちを他所に鼻歌を口ずさみながら濃いネイビーのネクタイを素早く結び出した。



✼✼✼



「うわぁ!!素敵」

「これも麻衣子に似合うと思うよ」

幸せそうに微笑み会う二人の間で何とも言えない表情になる。

「白石チーフ」

東館の藍沢チーフに肘でつつかれて「素敵ですね」と相槌を打った。

悩んだ末ウエディングドレスを東館の高級ブランドから選び今日はカップルとの打ち合わせと衣装選びに同席した。

「どうしたの?何だか上の空ね」

カップルとお別れをして東館で最終打ち合わせをしていると心配そうにコーヒーを出してくれる。

藍沢チーフって本当に綺麗な人だよな…
緩いウエーブのかかった髪を纏め綺麗なうなじが見え隠れするのが女の私でもドキッとする。

「すみません。大丈夫です」

理由を話せるわけない。
二期上の先輩であり元は私の仕事の教育係。

「頑張り過ぎちゃダメだよ?」

ふふっと笑って私の頭を撫でてくれる。

いくら私が何を頑張っても無駄な気がして暖かい藍沢チーフの手に肩の力が抜けた気がした。